「開田の夏休み〜Ⅲ」

行き着いた先は林道と呼ぶには立派な道路。路肩に車を止め、登山道を登ります。アッ、熊鈴を忘れた・・・、準備万端。沢筋を降り、背丈程のクマザサを掻き分けて川への道を辿りました。尾根から沢また尾根、いかにも「出そう」な筋。緊張したまま熊鈴を振り鳴らし、yamaaruki world Tさんに遅れないように懸命に歩くうち、どうにか沢筋に降りられました。まづは一安心・・・、かと思ったら本番は此処からでした。Tさんは再び山肌を登り始めました。
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こんな感じの草付斜面を、木の根や灌木で3点ホールドしながらトラバースして行きます。沢歩きの勘が戻って来て、怖さも忘れて身体が先へ先へと動き出す頃やっと、落差のある滝の上の入渓点に着きました。
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余裕のTさん、バテバテの私、釣る気満々のカズさん、3人3様です。お二人は、この川初体験の私に最初のポイントを譲ってくれました。水温が低く、午後から活性が上がると聞いていましたが、1投目の緩い巻き返しから焦れったくなるほどゆっくり最初の1尾が出て来ました。姿を現してから毛鉤を銜えて沈む迄、恐らく5秒程・・。こちらも思い切りゆっくり掛けたにも関わらず、取り込もうとした30センチ手前で流れにポチャリ。綺麗な魚体が泡喰って石裏に帰って行きました。Tさんはガイドに徹してくれ、私達に釣らせようとなかなか竿を振りません。感謝しつつも多少のプレッシャーの中、暫くは捗々しい釣果も無いまま高度を稼ぎます。何度かの休憩の後、「去年ここで連発したね」とカズさんがいったプールで一気に形勢が変わりました。岩盤と岩の間を流れる水底に幾つも影が見えます。私に・・、不発。変わってカズさん。1流し・・、2流し・・・、ポイントと思しき当たりを過ぎた毛鉤に猛スピードで良型が飛び出して来ました。続いて上の流れ、私のエルクにまるで喧嘩を売るような勢いで更なる良型。
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立派な尾鰭。
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厚い胸板。
前日の魚とは明らかに系統が違って見えます。確かに水系は違いますが、ここまでの違いには戸惑ってしまいました。原初の違いか人為に因るものかは分りませんが、このタイプからヤマト岩魚っぽい魚体迄、幾つかの変異が見られました。どの魚もしっかり太って、小気味良い引きで竿を絞ってくれます。次々とアタックしてくる良型岩魚、涼しげな小滝、渓を塞ぐコメツガの倒木、コマドリのさえずり・・・。気持ちの良い、心と身体の澱をみんな洗い流してくれるような最高の流れ。時間を忘れひたすら釣り上った先の一際高い滝が終着点でした。流れへの敬意と感謝のつもりで、出来る限り丁寧にループを作って滝壺奥に数投。最後のドラマってやつは起きませんでした。
川通しで入渓点に戻る道すがら、久しぶりの充実感に頭は麻痺したようにハイになっていました。疲れた身体を前に前に引っ張ってくれたのは、この渓の精気だったのかも知れません。
帰りの林道に1本のオオシラビソが立ち枯れていました。それを見上げて、この流れが変わらずにある限り何度でも回帰したいと切実に思いました。
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by goo_ism | 2008-07-26 22:40 | フライフィッシング | Comments(6)
Commented by yamaaruki world at 2008-07-26 23:21 x
goo~さん、源流を楽しめて良かったですね。
あの尺イワナ、力強かったですし、体形もバランスが取れた最高の固体でした。
また機会がありましたら行きましょう!
Commented by goo~ at 2008-07-27 20:17 x
yamaaruki worldさん、こんばんは。
殊に、終盤の大きなプールでの1尾は心に残りました。シーズン後には、
間違いなく夢に出て来て、何度も幸せにしてくれるでしょう。
兎に角、濃い経験でした。こんな出会い、この後のシーズンに有るんで
しょうか・・。
Commented by よねさん@鱒美 at 2008-07-28 20:33 x
頬のあたりの妖しく紫がかった色合い、実物を色々な角度から眺めてみたい美しさですね。
渓を取り巻く木や生き物の様子も、写真から文章から気持ちよく伝わってきました。
またいつか、行かなくちゃいけない渓が増えてしまいましたね(^-^)v
Commented by 八兵衛です。 at 2008-07-28 23:42 x
結構谷深く見えますが~此処から降りたすか?
この岩殿が居るのなら、其処からでも降りれますな♪
あっ・でも・できるだけ安全で!
 ・・・・人に言えないすね、いつの間にかどっかで無理してますね??

Commented by goo~ at 2008-07-29 09:22 x
よねさん、こんにちは。
岩魚って、不思議です。水系毎だったり、沢1本とか滝の上下とかで模
様・体色・表情が全然違う、なんてしょっちゅうですよね。ヤマトだニッコ
ウだ中間だ、とか簡単に割り切れるもんでもないと思わされます。
私はどんなタイプも全部好き、やっぱり岩魚愛してます。今回の木曽で
の経験は、大切な想い出、財産です。
Commented by goo~ at 2008-07-29 09:39 x
八兵衞さん、こんにちは。
写真は獣道とも呼べない急傾斜(崖)を木の根に掴まってヘズって行く
途中。水面迄は20メートルぐらい?身体が鈍ってるのを実感させられま
した。良い川でしたが前後の山道はPooさんに遭いそうで怖かった〜。
お互いに無理しないで事故のない釣りしましょうね〜。
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