夢を思いを、形にする仕事

昨年の秋深い頃だったか、デーモン魚絵師さんの1本の電話から事は始まった。「さる釣竿メーカーの会長から呼ばれてるんだけど、一緒に来てもらえまいか・・・」要約すればそういう事だが、何やら含みがありそうな話。私も竿づくりへの思いや提言を少しだけ携えて、年の暮れ、雪を頂く南アルプスの西を目指しタントを走らせた。

小半日の会議の結果は思惑とは違っていたが、事後の雑談中にゴッド・ファーザーから手渡された1本のサンプルロッドに、ハートを鷲掴みにされた。雑談の中身は、やれ竿は須くしっかり曲がる本調子、継ぎ手は丁寧に擦り合せたプットオーバーが最上、抜けの良いしなやかな本流竿が欲しいよねぇ・・・云々。手の中にある1本は、それまで延々喋っていた『良い竿』のファクターを全て備える竿だった。会長室は俄に開発室に変わり、【塩澤ゴッド・ファーザー胆入り《デーモン内田の本流竿/さつき鱒バージョン》を創る】プロジェクトが、この1本をベースにスタートすることになった。

さて、帰ってから暫く、考えた。考えた・・・、また、考えた。
過去に自分が生み出したモノからは完全に脱したい。常に狙いは『最新が最上(車のコピーか・・)』、差別化の為のギミックは論外だが、機能を超えた新らしさも盛り込んでみたい。頭の中では映画「ゴッド・ファーザー」のテーマが聞こえていたが、フッと目の前をマント翻す真っ黒な影の主役が横切る・・・、気がした。

ダース・ベーダー!! 「D・ベーダー内田ロッド」個人的にはこれで決まった!!♫ダンダンダン、ダダダン、ダダダ〜ン♫

クリスマスにイメージスケッチを送り、正月明けには意匠図・パーツ図を起こした。リールシート用材で素材屋と一悶着があったのだが、どうにか最小ロット分程度は手配が出来た。

かれこれ3ヶ月、ようようサンプルが出来上がって来た。グリップ部分はまだこれからだが、大方のコスメティックは何度かのチェック項目をクリアした本番仕様とのこと、胸躍らせて梱包を開いた。

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手前の竿が今回のプロジェクト竿『天龍/さつき鱒7’6”』。グリップ部意匠はまだ大きく変わるけど・・。
(奥は自分で組んだ7’。この『さつき鱒』のテイストを確認する為の、我がプロト・タイプ)

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グリップは下の図面のような意匠になる。シャフトは真っ黒なグロス塗装に黒スレッド、ゴールドのティッピングが基本。ガイドスレッドも同様。赤白の飾り巻きは「Made in Japan」のアイコンだ。この上部にロッド名とスペックのインスクリプションが入る。

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ガイドはチタンフレームKガイド。これだけでも相当なコストの筈だ。梱包を解いてこれを確認した時は、ゴッド・ファーザーの本気度を思い知らされる気がして、息を呑んだ。

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お約束というか、望み通りのプットオーバー・フェルール、逆並継ぎだ。丁寧な擦り合せでティップ部との径の差も「嘘ッ!」という程小さい。スピゴットが悪いというつもりはないが、よりスムーズな曲がりはこっちに1日の長ありでは?チューブラーのScottや国内D、S社を除いて、現在のソリッドペグを用いた印籠継ぎはコストを勘案した選択なんだろう、多分・・・。

かつて一緒に竿づくりをしたあるメーカーのビルダーが言った。「いろいろ触りますが、天龍のブランクが抜群に良いですよ!」この言葉を初めて実感出来た。サンプルを触り、眺め擦り、重箱の隅を突くようなチェックをしてみた感想は『なんて精密な竿!』だった。ラッピングやスパインの選定などは言うに及ばず、全てに安心感がある。ルアーを投げ、曲げてみた時の『気持ちの良い抜け』と『たおやかで、したたかな柳腰』のバランスは「ブラボー!」ものだった。

恐らくは相当に高価だし希少銘木使用ゆえ、生産数も限られるだろう。生み出す者としては、キャリアを積んで鱒を慈しんで釣るような、大人のアングラーの腕に抱かれて欲しいと願うのだが・・・。不遜だろうか?
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by goo_ism | 2011-03-24 17:19 | design | Comments(8)
Commented by 石上 at 2011-03-25 11:35 x
初めてブログを拝見しました。 前回のキャンプではお世話になりました。
ロッドですが凄いのが、できそうですね~楽しみですキャスティング練習にも顔出しますんで、また宜しくお願いします。
Commented by てぃも山 at 2011-03-25 12:26 x
内田さんのブログを拝見後こちらにとびました。
凄い!の一言です。
gooさんと内田さんの思いが詰まっているのですね。
Commented by 安曇野の案山子 at 2011-03-25 13:02 x
このロッド なんか息吹を感じるような この感覚

楽しみにしております
Commented by goo~ at 2011-03-25 13:45 x
石上さん、こんにちは。ようこそのお運びで。
この竿、良い出来だと思うのですがモノ指しは人それぞれ故、世に出
てからのご意見で鍛えられ、熟成するものと思ってます。

それはそうと、近隣に住んでいながら接点は無いもんですね。
キャス練会、お待ちしてま〜す。金曜の夜、葵区の保健所裏です。
Commented by goo~ at 2011-03-25 13:59 x
てぃも山さん、こんにちは。
いつものことですが拡げた風呂敷をどう畳むかが開発の要諦のようで。
私がいうと語弊があるかもですが、「凄い」とは少し違うかもしれません。
極めて真面目に真っ当に、思いブレずに形になった、そんな感じです。
現物は相当に「ジミ派手」でカッコいいですよ。お楽しみに。
Commented by goo~ at 2011-03-25 14:12 x
安曇野の案山子さん、こんにちは。
>息吹を感じる〜
ナントまぁ、嬉しいお言葉!冥利に尽きます。天龍は凄いっす!
ここまではOKでした。残るはグリップ周り。
いささかの不安無しとは言えず、まだ気が休まりません。
Commented by EJ at 2011-03-25 16:38 x
よかった。再開されたのですね。
まだかまだかと毎日覗いておりました。
ルアーロッドのことは全然分かりませんが、上品なデザインですね。

天龍はフライロッドも評価が高いのでは?

次は当然サクラマスと一緒の写真を期待してしまいます。
Commented by goo~ at 2011-03-25 18:20 x
EJさん、こんにちは。ありがとうございます。
我が儘勝手、大人げない振る舞いで恥ずかしい限りです。東北のあまりにも惨く酷い状況に続いて原発の事故・・・、怒りと絶望感に引きづられて悪口雑言を吐きそうでした。どんなにお見舞いや慰めを言っても私は所詮部外者だという罪の意識と、これが東海地震で原発が浜岡だったら当事者かと、狂おしい思いも・・・。

今回は仕事に救われました。自分に出来る事をやるしか無いとみんな言いますが、その通りなんでしょうね。目を瞑るのは止めようと、ただその一言です。

さて、天龍のフライロッドは2本持っていますが、愛竿には至らずです。一釣り人としては、天龍ブランドにSAGEと同じシンパシーは未だ持ち得ませんが、素晴らしいモノを創るのを見せつけられ、自分の中では赤丸急上昇中といったところ。いろいろ触って投げてみたいけど、なかなかチャンスが無いのが残念です。
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